読書

富の未来 上下  アルビン・トフラー、ハイジ・トフラー

本書の著作者であるアルビン・トフラーは「未来の衝撃」や「第三の波」など未来がどのように変化するかについて記述した著作で有名になった人で、しばしば「未来学者」という肩書きで説明されることも多いです。「富の未来」という邦訳ですが、原題は「Revol…

やりたいことのないヤツは社会起業家になれ  山本繁

「やりたいことのないヤツは社会起業家になれ」。なんとも挑発しているような、それともエールを送っているようなタイトルですが、内容は著者である山本繁氏が体当たりで送ってきた人生について描かれています。山本氏の行動力はスゴイくて、どことなくアメ…

「ニート」って言うな! 本田由紀 内藤朝雄 後藤和智

本書こと[「ニート」って言うな!]は実はすでに二年前に読んでいて、「ニート」を取りまく問題について何かしら語ろうとして挫折していたのですが、この挫折が今までも僕を縛り付けていると感じていたので、今回再読することで僕の「ニート」問題にある程度…

大本営参謀の情報戦記  情報なき国家の悲劇  堀栄三

日本は情報戦略に非常に弱いことが一部で有名です。最近では佐藤優氏などの著作にもありますが、日本人は外交や情報、諜報などに関する意識が鈍感で、情報や諜報の世界を考えたこともない人たちが多いと感じることはよくあります。 今と変わらず情報に対する…

戦略の本質 戦史に学ぶ逆転のリーダーシップ  野中郁次郎 戸部良一 鎌田伸一 寺本義也 杉之尾宣夫 村井友秀

今回紹介する本は僕が以前読んだ「失敗の本質 日本軍の組織論的研究」の続編で、名前は「戦略の本質」とはどういうものかということをいくつかのケーススタディから導き出しつつ、そのエッセンスを抽出していきます。「失敗の本質」は日本人の管理者やリーダ…

黒い雨  井伏鱒二

1945年8月6日は世界にとって衝撃の日になったといっていいでしょう。アメリカ軍が世界で初めて原子爆弾を日本に目掛けて投下したことは、人間が人間を殺傷するだけでなく地球の環境も潰せるようになる手段を人間が手に入れたことを意味していますし、…

斜陽、人間失格、グッド・バイ  太宰治

今回は太宰治作品を2つ連続で読んだので、まとめて書評しておきます。この内『斜陽』は1947年12月に新潮社から単行本として発行され、『人間失格』・『グッド・バイ』は1948年7月に筑摩書房から発行されました。いわゆる太宰作品の中でも最晩年にかかれ、お…

これが応用哲学だ!  出口康夫 美濃正 戸田山和久

哲学と聞くとなにやら難しそうな気がして取っ付きにくいような印象をもつ人は多いでしょうか。それともあんな学問なんの役にも立たないただの言葉遊びや思考実験だと感じる方のほうが多いのでしょうか。今回紹介する「応用哲学」は今まで哲学と呼ばれていた…

ル・オタク フランスおたく物語  清谷 信一

今回の書評は今までのとちょっと違い、とあるサイトに掲載して頂いた書評のコピーです。 しかし掲載の時に編集で結構内容が削られてしまいましたので、ディレクターズカット版というか単に無編集状態の書評を掲載します。 書き方も普段とはちょっと違うよう…

地政学入門  曽村保信

みなさんは「地政学」という分野の学問があることご存知ですか?地政学は広い意味では国際政治学の1分野のようですが、主流の国際政治学からみるとかなり毛色の違う学問です*1。地政学ではすべての人間を時間的、空間的な環境に集団で住んでいることを前提…

メルトダウン ドキュメント福島第一原発事故  大鹿靖明

2011年3月11日に起こったことを知らない日本人はだれもいないでしょう。マグニチュード9.0という規模の地震が東北・関東を襲い、さらにその後にやってきた津波が沿岸部を飲み込んでいった光景をテレビで何度見ても恐ろしく感じます。そしてそれだけではなく…

廣松渉 近代の超克  小林敏明

さて今回も前回に引き続いて『再発見 日本の哲学』シリーズから哲学者廣松渉を紹介します。廣松渉といえば難渋な文体で知られる日本の哲学者で、この方も前日の丸山眞男のように知る人ぞ知る人物です。僕は廣松渉の本を「今こそマルクスをよみかえす」しか読…

丸山眞男 理念への信  遠山敦

丸山眞男といえば政治学や日本の思想学を学ぶ上では超重要視されている知る人ぞ知る人物です。今回はこの丸山氏が持っていた個人的な思想・信条・理念を多くの著述と著作から推測しつつ、有名な「古層」における宗教の影響についての鋭い分析を加えているこ…

高度経済成長は復活できる  増田悦佐

今回紹介するのは「高度経済成長は復活できる」という刺激的なタイトルがついた本です。主な内容は高度経済成長を日本はなぜ達成できたのかというよりもどうして高度経済成長は終わってしまったのかに重点がおかれていて、高度経済成長を止めた原因とそれを…

安心社会から信頼社会へ  山岸俊男

最近「安心」や「安全」が日本からなくなってきているという意見を耳にしたり、そういう雰囲気を感じている方がいらっしゃると思います。特にテレビなどで大々的に犯罪が報じられると社会が悪くなっていると不安になる方も多いかもしれませんが、実際には少…

日本人とユダヤ人  イザヤ・ベンダサン

今回紹介する本はもしかするとかなり特殊な一冊かもしれません。なぜなら本書はかつて物議をかもしたことで有名で、日本人とユダヤ人の文化と特徴を比較してお互いに反対の特性をもった民族だというのが著者であるイザヤ・ベンダサン氏の主張なのですが、こ…

中国化する日本  與那覇潤

今回紹介する與那覇潤著「中国化する日本」は最近話題になっている本で、日本と中国の文明を比較対比させてお互いに正反対の文明を作り上げたと主張するかなり刺激的な本です。ですので「中国化する日本」という意味が、「中国が日本を併合する!」とか「中…

あなたの身近な「困った人たち」の精神分析  小此木啓吾

普段の生活をしていれば、なんであの人はあんな性格をしているんだろうと思うことは誰にでもあります。人を傷つける言葉を平気で吐いてくる人や、反対にオドオドしている人もいれば、猜疑心のカタマリのような人もいたりして、付き合っていると疲れると感じ…

機関車先生  伊集院静

多くの島が浮かんでいる瀬戸内海に葉名島という島がある。その島に建っている小学校に校長以外の教師がいなくなってしまい、校長は必死になって新しい先生を探していた。そしてひとりの教師が見つかるのだが、その教師はあくまで臨時として葉名島に赴任する…

無縁・公界・楽 日本中世の自由とその平和 網野善彦

少し前に亡くなられましたが、網野善彦という歴史家がいました。主に平安期から室町時代の研究で成果を上げた方なのですが、彼の歴史観は保守的な歴史学会からは異端とされ、網野氏自身も大学の末席ですごした研究者でした。しかし一方で網野氏の歴史観に影…

歴史人口学で見た日本  速水融

歴史人口学とは、簡単に言うと近代前の人口がどのように変わってきたのかについて調べる学問です。しかし単純に人口の数を数えるのではなく、人口増加といったマクロな視点から、ある家族がどういう身分だったか、人数は何人かなどを調べるミクロな視点も必…

歴史とは何か  E.H.カー  清水幾太郎 訳

みなさんは「歴史」という言葉に何を感じますか?今と関係ない過去の話のように感じますか、それとも過去から続く現代のことを思い浮かべる人も多いかもしれません。今回の著者であるE.H.カーは当時ケンブリッジ大学の教授で、その時の講義を訳した本です。…

大島弓子セレクションから 綿の国星1・2・3  大島弓子

今日のネタは大島弓子です。僕がとつぜん大島弓子を紹介するのにおどろく方がいるのではないかと思い、内心笑っています。大島弓子は少女マンガを代表するマンガ家のひとりで、彼女のマンガに影響を受けた人は今はアラフォー女子ぐらいになっているのではな…

雑談とBTRメソッドによる効果

さて本日の話題はこの本から始まります。 知的速読の技術―BTRメソッドへの招待作者: 松田真澄出版社/メーカー: 日本能率協会マネジメントセンター発売日: 1995/10メディア: 単行本 クリック: 5回この商品を含むブログ (2件) を見る僕はこの本を約二ヶ月間借…

ヒューマニティーズ 教育学  広田照幸

今回は前回に引き続き、広田氏の書いた教育書を読んでみました。本書はいわゆる教育の「学術書」ではありますが、とてもわかりやすく構成しています。 どれぐらいかというと教育学「入門書」の「入門書」と言っていいでしょう。この手の「入門書」て実は書く…

日本人のしつけは衰退したか  広田照幸

みなさんはどのような「教育」や「しつけ」をされて育ちましたか?あるいは今成長期の子どもを持つお父さんとお母さんはどんな「教育」や「しつけ」を考えていますか。現代社会ではこの「教育」と「しつけ」は複雑に絡み合っていて、どのようことを子どもに…

源氏物語  上・中・下巻  長谷川法世 作

本書は古典の中の古典と言われる源氏物語をマンガで描いた作品だ。しかしマンガといえどあなどるなかれ。マンガでも中身はトンデモなく濃い作品になっている。マンガだけならともかく脚注までひとつひとつ読んでいくと、マンガで描かれている内容の背景の深…

タテ社会の人間関係  中根千枝

あなたはタテ社会という言葉に対して、どのような感覚を持ちますか?会社や学校での先輩・後輩関係、上司と部下、地方を国など上下関係の日本社会などを想像するのが普通でしょう。本書はそれらについても言及しているのですが、そういう上下関係以上の抽象…

「超」整理法  野口悠紀雄

知識をどのように活かすか、思考をどのように行うことについて、「思考の整理学」外山滋比古と「知的生産の技術」梅棹忠夫の2冊を連続して読み、このブログで紹介してきました。今回3冊目に当たるのは、「「超」整理法」野口悠紀雄で、本書で書かれているの…

知的生産の技術  梅棹忠夫

前回考えるための方法として「思考の整理学」を紹介しましたが、この「知的生産の技術」はさらに以前に書かれた創造的な知的生産を行うための本です。 僕の知る限り、この「知的生産の技術」と川喜田二郎の「発想法」が戦後に書かれた知的生産のための方法を…