小説

黒い雨  井伏鱒二

1945年8月6日は世界にとって衝撃の日になったといっていいでしょう。アメリカ軍が世界で初めて原子爆弾を日本に目掛けて投下したことは、人間が人間を殺傷するだけでなく地球の環境も潰せるようになる手段を人間が手に入れたことを意味していますし、…

斜陽、人間失格、グッド・バイ  太宰治

今回は太宰治作品を2つ連続で読んだので、まとめて書評しておきます。この内『斜陽』は1947年12月に新潮社から単行本として発行され、『人間失格』・『グッド・バイ』は1948年7月に筑摩書房から発行されました。いわゆる太宰作品の中でも最晩年にかかれ、お…

星の王子さま  サンテグジュペリ  池澤夏樹 訳

子どもの行動や創造力って大人からみると不可思議にみえることがよくあります。でもそれはすでに自分が大人の世界にすっかり馴染んでしまい、子どもの世界への共感を失っていることを意味しています。ある時、とある子供の王子様がある惑星からやってきたら…

蹴りたい背中  綿矢りさ

高校になってから急にクラスのグループに馴染めなくなり、クラスでも浮いた存在になっている女の子の「私」。いっぽうどこにでもいそうな男子高校生である「にな川」は、実はある女性ファッション誌に出てくる「女の子」に夢中で、自分の世界に篭りっきりに…

老人と海  アーネスト・ヘミングウェイ  福田恆存訳

サンチャゴというひとりの老漁師が、メキシコ湾の隣接する小さな漁港に住んでいる。今では冴えない漁師の彼だが、近くに住む少年と共に平和な漁をしながら過ごしている。 ある早朝サンチャゴはフッと遠出の漁をしようと決めた。しかしここから人生において二…

アルケミスト 夢を旅した少年 パウロ・コエーリョ 山川紘矢・山川亜希子 訳

・・・・・・ 羊飼いの少年サンチャゴは、神父になる夢と彼の家族を置いて羊飼いになった。神を知ったり、原罪を知ることより広い世界を旅することが彼にとって重要だったのだ。そんなある日夢を見た。サンチャゴの羊とたわむれる子どもが、ピラミッドのそば…

キャッチャー・イン・ザ・ライ J・D・サリンジャー 村上春樹 訳

キャッチャー・イン・ザ・ライは、サリンジャーによって1951年に出版された大ベストセラー小説だ。さいしょに出版したときの売れ行きは芳しくなかったが、その後火をつけたように読まれ始め、いまでも1年で何十万冊が売れる。日本では、村上春樹が不思…