斜陽、人間失格、グッド・バイ 太宰治
今回は太宰治作品を2つ連続で読んだので、まとめて書評しておきます。この内『斜陽』は1947年12月に新潮社から単行本として発行され、『人間失格』・『グッド・バイ』は1948年7月に筑摩書房から発行されました。いわゆる太宰作品の中でも最晩年にかかれ、おそらくもっとも有名な太宰作品群だと思います。
まず『斜陽』からですが、この作品は敗戦直後の没落貴族の家庭を描いていて、なかでも娘のかず子が一人称で語る部分が多いのが特徴です。そのかず子と中心にお母さんと弟であるが物語を作ってい行きます。そして徐々に破滅へ向かおうとする母親と弟と、革命的に生きようとするかず子のコントラストが鮮やかに表現されています。
『人間失格』はこれも一人称で語られる物語なのですが、主人公は男性で周囲をとても気にして生きていて、生きる事そのものへの恐怖とそれを周囲にさとられまいと生きている姿は間違いなく太宰氏の人生とダブらせながら書いたことがわかります。
『グッド・バイ』は絶筆となった作品で、タイトル名からうける印象とは違いコミカルでユーモアにあふれた作品になっていることです。『人間失格』を読んで漠然とした感覚に囚われていた自分が、『グッド・バイ』の明るさに落差をうけて少し混乱しました。
これらの作品に共通する部分はまず太宰氏の最晩年の作品であることと、戦後すぐに書かれたこと、そしてその雰囲気にもろに影響受けながら書いたことでしょう。どれも戦後独特の明るさやかつての権威がなくなって没落していく様や、革命という言葉がもたらす未来への前進性など、戦後の混乱の中から生まれてきたものです。これらの影響をうけてすぐに文学にできる太宰治はどういう作家だったのだろうかと自問自答していますが、いかんせんたったこれだけの作品しか読んでいないので以下に僕がなんとなく感じた太宰治の見方を書いておきます。これは太宰氏の他の作品を読むとまた変わってくると思いますので、あくまで参考程度ということにしてください。
「太宰治という作家は、もしかするといつ打ち切ってもいい作家だったのではないか。この『斜陽』と『人間失格』は最後の心中前に書かれた本だけど、みなさんはこれらの本に太宰治という作家の特別性と共感をもったとしてそれ以前に太宰治が心中に成功していたらどう考えますか?それともこの心中でも太宰が生き残り、作家を続けることで新たな作品を作り続けることを夢想してみたとして、いったいどんな作品になったことでしょうか。
太宰治という作家を時間という視点から作品を考えてみるのもおもしろいと僕は考えます。」
- 作者: 太宰治
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1988/05/16
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