アルケミスト 夢を旅した少年 パウロ・コエーリョ 山川紘矢・山川亜希子 訳

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羊飼いの少年サンチャゴは、神父になる夢と彼の家族を置いて羊飼いになった。神を知ったり、原罪を知ることより広い世界を旅することが彼にとって重要だったのだ。そんなある日夢を見た。サンチャゴの羊とたわむれる子どもが、ピラミッドのそばで隠された宝物がみつかるよと、言った。サンチャゴは、はじめこの夢を信じなかったけど、同じ夢をもう一度みたことからこの夢を信じはじめる。


そしてジプシーのおばあさんに夢占いをしてもらうけど、煙に巻くような話しかしない。失望したサンチャゴは、広場のベンチで本を読みはじめた。するとひとりの老人が話しかけてくる。サンチャゴはさいしょこの老人を相手にしなかったけど、彼がサンチャゴの考えを知っていることに気づくと話に夢中になっていく。この老人はセイラムからきたメルキゼデックと名のったが、サンチャゴにはだれかわからない。そして明日10分の1の羊を老人にわたすと、隠された宝物の探し方を教えてくれると言うのだ。


彼は悩やんだが、ピラミッドのそばに隠されている宝物をさがす旅にでる決意をする。旅への準備はとんとん拍子に整う。老人にあげた羊以外の羊たちもすぐに売れて旅の資金ができた。そんなサンチャゴに、老人は白い石と黒い石---ウリムとトムミム---を渡す。老人は語る、「これからおまえがやってゆくことは、たった一つしかない。それ以外はないということを忘れないように。そして前兆の語る言葉を忘れてはいけない。特に、運命に最後まで従うことを忘れずにな」
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こんな風に物語ははじまっていく。「アルケミスト」は単なる冒険小説ではなくて、人生において大切なことをいくつも散りばめたミステリアスなお話だ。サンチャゴとメルキゼデックの会話にある、メルキゼデックの文章が非常に私の心を打つ。

「おまえがいつもやりとげたいと思ってきたことだよ。誰でも若い時は自分の運命を知っているものなのだ。
まだ若い頃は、すべてがはっきりしていて、すべてが可能だ。夢を見ることも、自分の人生に起こってほしいすべてのことにあこがれることも、恐れない。ところが、時がたつうちに、不思議な力が、自分の運命を実現することは不可能だと、彼らに思い込ませ始めるのだ」 pp28

「その力は否定的なもののように見えるが、実際は、運命をどのように実現すべきかおまえに示してくれる。そしておまえの魂と意志を準備させる。この地上には一つの偉大な真実があるからだ。つまり、おまえが誰であろうと、何をしていようと、おまえが何かを本当にやりたいを思う時は、その望みは宇宙の魂から生まれたからなのだ。それが地球におけるおまえの使命なのだよ」 pp28


もしあなたがこんな言葉を投げ掛けられたらどうしますか?今の自分はこの言葉を、この小説にある言葉を、すんなり受け止められない。それだけ自分自身の至る所が錆びついてしまっているんだと思う。もう少し自分の人生をあがいてみたい。


最後に、この「アルケミスト」は、作家パウロ・コエーリョの名を一躍有名にした小説になる。本書「アルケミスト」以前に、「星の巡礼」という作品もある。これはすでに購入しているので、今度読んで書評をつける予定です。

アルケミスト 夢を旅した少年 (角川文庫)

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