複雑で単純な世界  ニール・ジョンソン  阪本芳久訳

みなさんは複雑性という言葉をご存知ですか?実は複雑性や複雑性科学と言う言葉は、たいへん一部でですがもてはやされています。ぼくは複雑性科学こそ本当の科学だ!と言うような文章を読んだこともありますが、果たして実態はどのようなものでしょう。


著者のニール・ジョンソンは複雑性科学を、「相互作用をしている多数の要素の集合で生じる現象の研究」と見なしています。わかりやすく言うならば、多くの人々がお互いに影響を与えながらも、その中から新しいものが創造されたり、新しい現象が起こったりするのを解明しようとする研究と言っていいでしょう。


複雑性には厳密な定義は存在しませんが、著者は複雑性の定義を8つにまとめています。
1,系に相互作用している多数の要素(エージェント)の集団が含まれていること。
2,系の構成要素が記憶(フィードバック)の影響を受けていること。
3,系を構成する要素が過去の結果にもとづいて戦略を変更できること。
4,一般には「開いた」系であること。
5.「生きている」ように見える系であること。
6.創発現象が見られる系で、その創発現象が概して予想外のもので、極端なものになる場合があること。
7.創発現象が通常、「見えざる手」のような全体を制御する中心的な存在なしで生じること。
8.秩序ある挙動と無秩序な挙動の複雑な組み合わせを示す系であること。


このような定義から、著者は複雑性科学は科学の中の科学と位置づけます。それまで何の関連もなかったと言われる現象間の相互作用の中から、類似性や新しいつながりを見つけようとしているのです。


本書はそのような複雑性を丁寧に解説しつつ、様々な人達が読めるようにやさしく書かれています。ただまったく予備知識のない人がいきなり読むと挫折してしまう危険はありますので、上の定義を読んで大丈夫そうだなと思う方はぜひ挑戦してみてください。


複雑で単純な世界: 不確実なできごとを複雑系で予測する

複雑で単純な世界: 不確実なできごとを複雑系で予測する