若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来 城繁幸

最近の若者は根性がない、やる気がない、もっとしっかりしろ。私たちの世代は、こんな罵倒とも、激励ともいえる言葉をよくかけられる。たしかに私なんぞは、よくクダラナイことを考えたり、クヨクヨしたり、ダラけている。だけど、私たちの世代が以前の世代とくらべて劣っているのだろうか?人間の本質なんてそうそう変わるもんじゃない。劣っているのではなく、もっと別の理由が互いの世代の理解を阻害しているのではないだろうか?


本書は現在の若者と企業の関係から始まって、現代ニッポンの社会構造問題へ切り込んでいく。著者である城氏は企業の人事部の人にインタビューして、最近の若手にどういう感想をもっているかを聞き出している。

彼らはわがままな反面、われわれの世代と比べると明らかに忍耐力が劣っている。だいたい、企業で最初からやりたいことができるなんて考えが甘いんです。自分も入社から五年間はずっと先輩の手伝い中心で、どちらかというと肉体労働に近かった。やっと人事ち言えるような仕事を任されるようになったのは三十五歳を超えてから。最近の学生はわがままですよ。 p31


これに城氏は、企業の人事採用方針が変わったことが原因だと指摘する。バブル期のように仕事ならなんでもやるというタイプではなく、専門に対するインセンティブや明確なキャリアプランをもった若手が採用されるようになったからこそミスマッチがおこると言う。つまり希望していた業務ができず、実際に振り分けられた業務にフラストレーションを感じるのだ。


フラストレーションがあるのは、なにも若手だけじゃない。今企業に務めている30代も、社内で出世も昇給もないどころかクビを切られることもある。かつてのように終身雇用体制のなかでは、多くの社員は課長までのポストが割り当てられていた。今もし定年まで同じ会社に務めたとしても出世もできず、飼い殺しになる可能性が高くなってきているのだ。


なぜこんなことになっているのだろうか?理由のひとつに正社員と派遣社員の違いがあげられる。多くの企業は新卒制度を採用していて、正社員になるためには高校、大学卒業後にすぐ就職できなければならない。それに失敗してしまうとフリーターや派遣に登録するしかなくなるが、ここから正社員になる道は新卒時よりもずっとハードルがあがる。よしんば正社員として企業に勤めれたとしても、さっきあげたように途中から昇給がなくなるかもしれない。またはうつ病になって、会社を辞めることになるかもしれない。完全に袋小路だ。


そんな若者たちに別の重圧がのしかかる。それは社会保障システムの老朽化だ。もともと日本の社会保障は、若者に負担を大きくして、老人に手厚く保障するシステムになっている。*1それが少子高齢化の進展によってますますひどい状況になっているのだ。20代から70年代の資産を調べると、歳を取るほど多くの資産をかかえている。*2もちろんお金をもっていない老人もたくさんいるし、老人=悪だと私には言い切れない。彼らに罪があるとすれば、こういうことになっているということを自覚してないところだ。


ではどうすればよいのだろうか?答えのひとつとして、若者が自分の道を己で見つける方法がある。たとえキャリアがなくても、自ら興味のある分野につき進むことによって切り開く道だ。今そういうことがカンタンにできないのは、私もよくわかる。ここでエラそうに言える資格もない。ただ生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされたとき、最後のあがきとしてできることがあるのではないだろうか。
それじゃあ、年功序列、まっとうといわれる職業から抜け出た(てしまった)人やアウトサイダーの生き方ってどんなものがあるのだろう?城氏の次の著作である「3年で辞めた若者はどこへ行ったのか」の書評ですこし紹介したい。

若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来 (光文社新書)

若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来 (光文社新書)

*1:http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/51176910.html

*2:若者たちはなぜ3年で辞めるのか? p122