次世代ウェブ -グーグルの次のモデル- 佐々木俊尚

今回はインターネット関係の本を紹介したい。本書で語られる次世代ウェブとは、web2.0のことだ。いきなりweb2.0と言われて、どういうものかピンとくる人にはもう本書はいらないかもしれない。しかも2010年時点で、web2.0という言葉もつかわれなくなっている。ただ最近のベストセラーである「フリー」にいたった流れを理解するには、本書はかなり便利だと思う。


web2.0とはどういうものだったのだろう。web2.0の概念を、佐々木俊尚氏の言葉をつかって説明してみたい。

それはひとことで言えば、「すべてをオープンにしていこう」という概念である。
インテルがパソコンのハードウェア、マイクロソフトがOSを支配していた80〜90年代的な囲い込み的なビジネスを排除し、プラットフォームフリーなウェブベースへの転回。
広告主をウェブが支配するバナー広告モデルから、消費者主体のターゲットマッチング広告への転回。
ウェブ中心部だけでなく、周縁部(ロングテール)も大事にしていこうという考え方への転回。
ソフトウェアを軸にして考える世界から、データベースを中心にする世界への転回。 p26


これらに至った経緯を解きあかし、さらにweb2.0的なビジネスに挑戦している人たちを紹介していくのが本書のおおまかな流れだ。ただweb2.0はこれだとひとことでかたづける言葉はない。上にあげた定義は、どうやらこういう方向に進んでいるらしいという方向性の話にすぎない。


たとえば、web2.0的な企業として有名なのはグーグルとアマゾンだ。グーグルは洗練された検索システムを構築することによって、情報の海から必要な情報をひろい出す手法をつくった。それに広告を導入し、収益を得ているのがグーグルだ(だいぶ大雑把な説明だけど・・・)。
一方アマゾンは、あらゆる商品を取り扱うことによって収益を出す。ここで有名なのは、ロングテールがアマゾンのおける売り上げの三分の一を占めるということだ。いままでのビジネスモデルだと一番売れる部分、つまり大衆に一番ウケる物を中心に扱うのが基本だった。ところがそういう大衆ウケにいいものだけではなく、少数にしか売れないものを大量に集めることによってビジネスに仕立てたのだ。


これらはあくまでも代表的なweb2.0の話であり、実際はさまざまな形のビジネスがある。本書が執筆された時期(2007年)と比べて、いろいろなものが出てきた。最近だと電子ブックが代表にあげられるだろうか。


しかし現時点(2010年)でweb2.0的ビジネスを大成功させた日本企業はあらわれていない。いや、あらわれなかったのだ。なぜあらわれなかったかについては、インターネット上で議論があるのでそちらを参考にしてほしい。少なくとも放送・通信において、日本企業が大成功しそう流れが今もないのだ。もう日本の放送・通信業界から新しい流れが出てくることはないのだろうか。

次世代ウェブ  グーグルの次のモデル (光文社新書)

次世代ウェブ グーグルの次のモデル (光文社新書)