2月分の読書メーターのコメントでもあげてみるか

読書メーターでつけているコメントも、ブログの足しになるかと思うのであげてみます。こうしてみると、それなりに読んでいるんだな〜。



2月の読書メーター
読んだ本の数:20冊
読んだページ数:5604ページ


改訂新版 共同幻想論 (角川ソフィア文庫)

改訂新版 共同幻想論 (角川ソフィア文庫)

吉本氏は幻想を三つに区分する。それぞれを自己幻想、対幻想、共同幻想とし、これらに対して心理学的、または哲学的にアプローチしていく。そのさいにしばしば使われるのは、「遠野物語」と「古事記」だ。これらのテキストをしようすることで、日本の心理的、政治的、宗教的古層にあたる部分や、世界に共通する共同幻想を探るのだ。これが初吉本本なので、現代日本思想の位置づけはよくわからない。しかし本書がもつ、あやしい魅力は感じ取れた。本書自体が幻想なのに、この世の幻想を語るなんてことは、そうそうない。
読了日:02月27日 著者:吉本 隆明

暗黙知の次元 (ちくま学芸文庫)

暗黙知の次元 (ちくま学芸文庫)

以前の訳書で暗黙知の働きを説明したので、今回は探求者たちの社会についてメモしておきたい。探求者(創発しようとするすべての人)は、ある隠れた潜在的可能性を発見しようとする姿勢をとる者である。人間の創造は、コミットメントと伝統と、それらを結びつける暗黙知の次元から誕生するのだ。完璧な懐疑主義と客観主義は、しばしば完全主義をもたらし自己矛盾におちいる。暗黙知は不安定だが科学だ。暗黙知を意識することによって探求者たちの内面にダイナミックな創造性が胎動するかもしれない。もちろん暗黙知は意識せずとも働いている。
読了日:02月25日 著者:マイケル ポランニー

地中海世界

地中海世界

ブローデルたちは、地中海世界を「空間と歴史」と「人間と遺産」に分類し、様々な角度から地中海を分析していく。地中海世界とは無数の景観と、いくつもの海の連続と、互いに層をなすいくつもの文明から成り立っている。今地中海は三つの文明・・・カトリックギリシャ正教会イスラム・・・で構成されているが、文明それ自体は必ずしも歴史全体にはなりえない。時間、空間、文明、政治、経済、文化、慣習、芸術などあらゆる要素の相互の影響と結果こそ歴史になるのだろう。地中海はそれらを受け入れ、産み育ててきた豊穣の海なのだ。
読了日:02月22日 著者:

ローマ亡き後の地中海世界 下

ローマ亡き後の地中海世界 下

サラセン海賊は中世後半になると徐々に衰退していく。その中で15世紀ごろから新たにオスマントルコキリスト教国に脅威を与える。トルコはバーバリアン海賊たちを非公式に支援するだけでなく、彼らの頭をトルコ艦隊の正式な提督として任命することによって、地中海制覇に乗りだす。対するキリスト圏では強国同士であらそうパワゲームをくりひろげていて、一枚岩とはなかなかいかない。最終的にレパントの海戦とマルタでの勝利によって、地中海は再び均衡状態に戻る。しかし海賊が地中海から消えるのは、19世紀中頃までまたなくてはならない。
読了日:02月20日 著者:塩野 七生

ローマ亡き後の地中海世界(上)

ローマ亡き後の地中海世界(上)

ローマ時代「内海」だった地中海は、文明を隔てる境界の海にもどってしまった。ローマ亡きあとの西ヨーロッパに対立する文明は、北アフリカを征服したアラブ・イスラム文明になったのだ。彼らはサラセン人として、シチリアサルデーニャ、コルシカ、イタリア本土、フランス南部沿岸を荒らし回って、あまたの財産や人々を奴隷として連れ去った。彼らへの対抗から海洋都市国家が発達し、さらに貿易を通じて成長していくことになる。あまり語られることのなかった、「浴場」に収容されているキリスト人奴隷を救出する二つの団体の物語も興味深い。
読了日:02月18日 著者:塩野七生

論文作法─調査・研究・執筆の技術と手順─ (教養諸学シリーズ)

論文作法─調査・研究・執筆の技術と手順─ (教養諸学シリーズ)

本書は、Under Graduate から Post Graduate や Scholar をおもに対象とした、学術論文の指南書だ。 イタリア人であるウンベルト・エコが著述しているため、欧米での論文の作法(特に引用方法)となっているが、日本語でも本書のエッセンスは変わらない。とりわけ、引用の厳密さや資料の調査法に重点がおかれていて、論文を書くだけでなく、フォーマルな文章を書く際にも使えるテクニックがふくまれている。コメントに気になるポイントをメモしておきます。
読了日:02月17日 著者:ウンベルト エーコ

『坊っちゃん』の時代 (第5部) (双葉文庫)

『坊っちゃん』の時代 (第5部) (双葉文庫)

そして明治は、巡りめぐって漱石の前にもどってくる。胃痛に悩まされ続けた漱石は、ついに死の淵にたたされてしまう。彼がのぞいた死の片鱗とは、縹渺としたさむしい安らぎだった。その後、漱石は息を吹き返して六年あまりを生きることになるが、本書は漱石の復活と、秋水・啄木の死で終わる。明治人たちの生死が交わり、栄光と混沌の明治は暮れてゆく。
読了日:02月16日 著者:関川 夏央,谷口 ジロー

『坊っちゃん』の時代 (第4部) (双葉文庫)

『坊っちゃん』の時代 (第4部) (双葉文庫)

坊っちゃん』の時代 第4部 明治流星雨―凛冽たり近代なお生彩あり明治人 (第4部)
幸徳秋水などの無政府主義者は、強力にはたらく家父長制の中から生まれでた。彼らは、一方向に進む権力者たちへの反発者であると同時に、体制の鏡でもあったのだ。彼らの行動は、しばしば危険なものとされて、口に出されることもあまりなかったが、彼らをしっかりと捉えなければ変わりゆく明治を理解することができないだろう。ただ頭山満などの玄洋社も、少なくない影響があったはず。彼らの行動もマンガに書いて欲しかった。
読了日:02月15日 著者:関川 夏央,谷口 ジロー

『坊っちゃん』の時代 (第3部) (双葉文庫)

『坊っちゃん』の時代 (第3部) (双葉文庫)

石川啄木も、変わりつつある明治後半の雰囲気をつくるキーパーソンとして描かれている。 夏目漱石森鴎外は、明治前の日本と、明治後の文明開化との葛藤の中で揺れ動いた明治人だが、啄木はすこし毛色が違う。彼の体験したものは近代人特有の悩みであり、弱さであり、傲慢であり、甘さだ。もちろん本人の性向もあっただろうが、くよくよ悩んでしまう姿は現代人にも、また自分にも通じているように感じる。
読了日:02月14日 著者:関川 夏央,谷口 ジロー

生物の世界 ほか (中公クラシックス)

生物の世界 ほか (中公クラシックス)

今西氏は、生物の世界を「種個体→種社会→生物全体社会」として表しつつ、それぞれ相互補完する形で成り立っていると主張する。特にダーウィンの進化論や、生存競争に疑問を持ち、積極的に批判をくわえていく。少数の突然変異体が進化を引っ張るのではなく、ある時期に達すると、種ごと変化するというのが今西氏の自然学だ。著者はヒラタカゲロウの棲み分けから、競争もある時点で均衡になり、種社会が棲み分けられていくのではないかと考えた。今でも生物や自然や山々を見つめる上で、今西氏の思想は生きるだろう。
読了日:02月13日 著者:今西 錦司

文明の生態史観ほか (中公クラシックス)

文明の生態史観ほか (中公クラシックス)

文明の生態史観とは、生態学理論を元にした歴史の概念だ。梅棹氏は、旧世界をまず第一地域と第二地域にわける。第一地域には西ヨーロッパと日本が含まれ、第二地域は中国世界、インド世界、ロシア世界、イスラーム世界が、乾燥地帯の周辺に位置する。ここで著者は、西ヨーロッパと日本は平行遷移(サクセッション)してきたのではないかと主張する。第一地域は自生的遷移(オートジェニック・サクセッション)に発達し、一方で第二地域は、遷移が他成的(アロジェニック)におこなわれたので、ついに第一地域のようにはなれなかった。
読了日:02月11日 著者:梅棹 忠夫

『坊っちゃん』の時代 (第2部) (双葉文庫)

『坊っちゃん』の時代 (第2部) (双葉文庫)

森鴎外は、ドイツ留学時にひとりの女性と恋に落ちた。これを鴎外は、「舞姫」として世間に発表し、当時の世間をおどろかせた。本書は西洋の文物を積極的に取り込もうという明治後半の雰囲気と、日本人の西洋人アレルギーをよく描き出せている。鴎外の体験した不条理と葛藤も、もはや現代ではなりたたないのだろうか。
読了日:02月08日 著者:関川 夏央,谷口 ジロー

『坊っちゃん』の時代 (双葉文庫)

『坊っちゃん』の時代 (双葉文庫)

夏目漱石は変人である。酒乱気味であり、精神薄弱であり、一日中小説のことを考えるために、帝国大学をやめ、朝日新聞と契約を結ぶ。本書では、夏目の変人ぶりも、混沌としながらも国家として若かった明治の雰囲気もよく出ていて、おもしろい。近代日本文学の巨魁を小説とはちがった切り口で表現しているので、躍動感がありつつも、新鮮だ。
読了日:02月08日 著者:関川 夏央

コンテンツ消滅 音楽・ゲーム・アニメ ペーパーバックス

コンテンツ消滅 音楽・ゲーム・アニメ ペーパーバックス

パソコンとインターネットの急激な普及により、知財(本、映画、音楽、ゲーム、アニメなど)のありかたが変わっているのだという。今までのビジネスモデルが通用しなくなってきているものの、新しいモデルを生み出せずに、四苦八苦している様子が本書からうかがい知れる。小林氏は、現状を見据えつつ、新しい状況に対応していかなければならないと説く。情報技術、デジタルエンターテイメント、ビジネスモデル、著作権など、この分野は根本的に変わる可能性を秘めている。本書は2004年に発売されたが、現在もまだ本書の延長上にいる。
読了日:02月07日 著者:小林 雅一

月1千万円稼げるネットショップ「売れる」秘訣は文章力だ!

月1千万円稼げるネットショップ「売れる」秘訣は文章力だ!

この本は、ブログ、メール、ウェブ上で相手に伝わる文章の書き方を中心に述べた、文章読本。どのようにすれば、説得力をもった文章になるかを詳しく書かれているので、参考になるところが多い。主語をはっきりさせる、「が」でつながない、意味のない「で」を使わない、品位のない「する」「して」「やる」を使わないなどは、日常の文章でも使用できる。
読了日:02月06日 著者:勝吉 章

ゴールドラッシュの「超」ビジネスモデル

ゴールドラッシュの「超」ビジネスモデル

本書は19世紀サンフランシスコでのゴールドラッシュと、20世紀後半に起こったIT革命を比較して、実際にお金持ちになった人はどういうことを行ったか共通点を探っていく。前半はいかに人々がゴールドラッシュでお金持ちになったか(金を掘ってお金持ちになった人は皆無)と、スタンフォード大学の設立について書いていく。後半はIT産業とスタンフォード大の関連性や、シリコンバレーの成立を描きつつ、どのようにITが稼げる産業になったかを説明する。日本にもこういう動きがあれば、経済も立ち直っていくのではないだろうか。
読了日:02月05日 著者:野口 悠紀雄

暗黙知の次元―言語から非言語へ (1980年)

暗黙知の次元―言語から非言語へ (1980年)

暗黙知とは、行為 or 知識の裏に隠された「知る」という知覚が存在するのではないか、というマイケル・ポラニーによって提唱された概念だ。暗黙知はまず2つの概念(機能的構造、現象的構造)から構成され、それを説明するための意味論的側面があるという。さらに、それらの思考によって暗黙知が存在するということが知覚できるので、存在論的側面が導き出せる。ポラニーはこれを「あるものへと注目する(attend to)ため、ほかのあるものから注目する(attend from)」と説明する。創造や科学に興味のある人は必読。
読了日:02月04日 著者:マイケル・ポラニー,佐藤 敬三

伝わる・揺さぶる!文章を書く (PHP新書)

伝わる・揺さぶる!文章を書く (PHP新書)

伝わる・揺さぶる! 文章を書く (PHP新書)

伝わる・揺さぶる! 文章を書く (PHP新書)

学生からお年寄り、メモから企画、クレーム処理の書き方まで網羅した幅ひろい文章読本。よい文章を書くには、まず七つの要点(意見、望む結果、論点、読み手、自分の立場、論拠、根本思想)を意識しなければならないと説く。その中でも「論点」、「論拠」、「意見」を基本として文章を書くことを勧めている。論拠をみつけ、論点を絞り、意見を決めていくためには様々な要因を考えなければならない。山田氏は、この本でいかに伝わる文章を書くかを実践している。著者が読者に思いのたけを明かす文章読本はめずらしいと思う。
読了日:02月03日 著者:山田 ズーニー

ラクして成果が上がる理系的仕事術 (PHP新書)

ラクして成果が上がる理系的仕事術 (PHP新書)

本書は理系的仕事術とうたっているが、文系理系関係なく、鎌田氏の仕事術として受けとればいいだろう。そうしてみると、この本の基礎はなにごとも徹底的に分類 or 細分化し、ひとつひとつクリアーしようということになると思う。これは福田和也氏と正反対のやり方とも言える。すべてを細かく分析し、コツコツ進める事ができる方は参考になるかも。個人的には、「ルーズリーフはバインダーに閉じるな」など細かい点で参考になることが多かった。コメントに、中で使われた16個のキーワードを書いておきます。
読了日:02月02日 著者:鎌田 浩毅

解剖男 (講談社現代新書)

解剖男 (講談社現代新書)

マッドサイエンティスト(!)のような容貌をもつ遠藤氏による、生物の解体新書。遺体を「硬い遺体」「軟らかい遺体」に分類し、「系統=歴史の制約」と「適応=生きるための回答」を通して、生物の神秘を見つけ出していく。さらに解剖がかえりみなれなくなっている現状に怒り、「遺体科学」の構想もぶち上げる。この本では書かれていないが、人間の遺体も、もっと真剣に見つめていかなければいけないはずだ。こういう試みから新たな「知」や「真理」が出てくることを期待したい。
読了日:02月01日 著者:遠藤 秀紀

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