読書メータ2012-4月分

4月の読書メーター
読んだ本の数:18冊
読んだページ数:4118ページ
ナイス数:102ナイス


日本人のしつけは衰退したか (講談社現代新書)

日本人のしつけは衰退したか (講談社現代新書)

日本人のしつけは衰退したか (講談社現代新書 (1448))
大正時代の教育がどのようなものだったかについての説明から始まり、どのようなしつけが行われ、時代によって教育が変化したかについて描かれている教育社会学本。「しつけ」は狭い意味では礼儀作法を意味し、広い意味では望ましい人間を作ろうとする外からの作用というのが本書の定義だ。戦前は家での「しつけ」が中心ではなく、地域共同体である村の中で「しつけ」は行われてた。その後高度成長を果たした後、地域共同体としての村は崩壊していった。ここから家族が学校に直接子どもの教育に口を出し始めた。
読了日:04月30日 著者:広田 照幸

下巻は光源氏の壮年期から息子の夕霧の描写が中心になり、最後は紫の上が死去して源氏が無常を感じる場面で終わる。その後の光源氏や夕霧の話を描いた「雲隠」は、本書では余談のようになっている。基本的な内容は年をとった光源氏より若い夕霧とその逸話が多く、長編小説としての変遷が感じられる。しかし源氏物語のマンガとはいえこれほど濃い読書体験もほとんどない。このマンガを書いた長谷川氏も相当書くのに苦労しただろうと思う。このマンガを読むだけでも源氏物語の繊細さ、心理描写、巧みな筋立て、作者の美意識にやられてしまう。
読了日:04月27日 著者:長谷川 法世

タテ社会の人間関係 (講談社現代新書)

タテ社会の人間関係 (講談社現代新書)

1967年に出版されたとはいえ未だに全く色あせていない日本論。日本が広い意味でタテ社会の構造になっているという指摘は目を覚める思いになる。そしてこれは大企業や国家・地方の公務員には当たり前の構造として残っているし、団塊世代はこの人間関係をいまだに引きずっているように感じる。集団構成は「場」の複数所属を認めず、単一の集団による「場」によって団結を維持しているが、その実態はバーティカルな小集団で統制され、リーダーは実質「置き物」であっても組織は維持できる。そしてその下のサブリーダーといえる人たちは仲間ではない
読了日:04月26日 著者:中根 千枝

源氏物語(中)―マンガ日本の古典〈4〉 (中公文庫)

源氏物語(中)―マンガ日本の古典〈4〉 (中公文庫)

中編はちょうど光源氏が須磨・明石からの左遷から帰ってきて、今まで以上に出世をした壮年期の頃からの物語になっている。光源氏と紫の上との間柄が「紫の上が嫉妬して、源氏が宥める」といういかにも理想的な関係になっているけど、物語だからこそこれほどうまく二人の関係が続いたのだろうか。そして光源氏と玉鬘の関係はただならない関係といっていいだろう。これは光源氏の言い難い欲から始まっているけど、いつのまにか玉鬘もその関係を矛盾した気持ちの中で受け入れていく。光源氏の息子の夕霧を始めいろいろな人物の情念が渦巻いている。
読了日:04月25日 著者:長谷川 法世

ル・オタク フランスおたく物語 (講談社文庫)

ル・オタク フランスおたく物語 (講談社文庫)

ル・オタク フランスおたく物語 (講談社文庫)
読了日:04月25日 著者:清谷 信一

知的速読の技術―BTRメソッドへの招待

知的速読の技術―BTRメソッドへの招待

だんだん効果が出てきている気がするが、まだまだ訓練が必要そう。いま一歩コツがつかめていない感じ。しかし、認知科学を利用して具体的なメソッドを描いているところが本書のいいところ。
読了日:04月24日 著者:松田 真澄
読了日:04月23日 著者:長谷川 法世

「超」整理法―情報検索と発想の新システム (中公新書)

「超」整理法―情報検索と発想の新システム (中公新書)

「超」整理法―情報検索と発想の新システム (中公新書)
本書を読んで驚いた。自分と同じように整理がうまくできない体験をして、そして似たような解決法を、僕よりずっと徹底して行なっていたのだ。僕は例えば最近観光した場所のパンフレットを時間順で並べたりしている。そうでもしないとすべてをゴチャゴチャな状態での保存になってしまっていたからだ。本書で描かれているコンピューターというより個人情報端末の圧倒的な発展は、書かれた内容のほとんどの問題点を解決していることにも注目したい。この時間順のタスク解決は、日々の煩雑な業務を解決してくれるだろう。紙による知的生産は他のやりかた
読了日:04月22日 著者:野口 悠紀雄

知的生産の技術 (岩波新書)

知的生産の技術 (岩波新書)

数多くの整理術や文章術、さらに思考術に対する本は山ほどあるが、本書はその中でも元祖のような存在。とりわけ京大式カードや独自のファイリングシステムを作り出した整理術が抜きん出ているようにみえ、その後の「知的生産」に大きく影響を及ぼした。今から見ると多くの技術論は、時代遅れか使うには肌が合うかどうかの問題になってくるが、常に新しい技術を開発していこうという気概はちょっとやそっとでは真似できない。本書は今でも自分自身の「知的生産」に対するたたき台になっていて無視できないところが読む人ごとによって違ってくるだろう
読了日:04月21日 著者:梅棹 忠夫

思考の整理学 (ちくま文庫)

思考の整理学 (ちくま文庫)

東大生が一番読んでいる本!などというPOPのもとで、本屋の平積みになっていることの多い本書。こういう売り出し方は嫌だなと思いつつも、考えることをいかに文章として表現するかに僕は苦心しているので、つい手にとってみた。読むこと、書くこと、考えること、そして何かを思いつくことが相互に関連しあっているのだということを、実に簡潔に描いている。その辺によくある思考訓練とか、文章訓練を読むよりも、この本一冊で大丈夫だろう。今から30年近い前にコンピューターの発展についての記述には先見性を感じた。
読了日:04月19日 著者:外山 滋比古

つぎはぎだらけの脳と心―脳の進化は、いかに愛、記憶、夢、神をもたらしたのか?

つぎはぎだらけの脳と心―脳の進化は、いかに愛、記憶、夢、神をもたらしたのか?

人間の脳は現代のコンピューターに真似の出来ないスゴイ機能もあるけど、ニューロンの伝達速度はコンピューターの100万分の1にすぎず、またパソコンが一秒間に100億の演算が行われるのに対して、脳は1秒間に400回ほど(1200回する部分もある)スパイクが発生するのにすぎません。それは人間が進化してきた過程で、その場限りの対応をしてきたからにほかなりません。リンデン教授はそれを例えてアイスクリームコーンの上にひとつひとつアイスを載せていったのだと言います。カエル、ネズミの頃の脳が今でも人間に残っているのです。
読了日:04月18日 著者:デイビッド・J. リンデン

星の王子さま (集英社文庫)

星の王子さま (集英社文庫)

子どもの時の行動や創造したものは、たいていの大人は理解してくれない。それは子どもが今創りだしている世界と大人が作った社会や世界とはかけ離れているから。そんな子どもだった僕もいつしか大人になって大人として振舞っている。だけど僕は子供の時と大して変わっていないという実感は持ち続けているけど、それはやはりいつの間にか遠くに離れてしまっているんだと思う。「じゃ秘密を言うよ。簡単なことなんだ・・・ものは心で見る。肝心なことは目では見えない」この言葉は僕も繰り返して読んだ。僕の心の王子様は星を語ってくれるだろうか。
読了日:04月16日 著者:アントワーヌ・ド サン=テグジュペリ,Antoine de Saint Exup´ery,池沢 夏樹

蹴りたい背中 (河出文庫)

蹴りたい背中 (河出文庫)

クラスのグループに馴染めなくて、孤立してしまっている主人公の「私」と、オタクというか自分の世界に籠もりっきっている男子高校生「にな川」。この一見接点のないふたりが、あるきっかけで急に接近しだす。でもそれは「私」にとってはあまりいい体験じゃなかったけど、反対に「にな川」にとってはありえないほどの幸運だった。ここからふたりの物語は始まるのだけれど、あくまで「にな川」の興味は一点だけ。あとはすべて「私」の感覚から通した世界感で物語は進んでいく。この小説は青春小説だけど、著者の青春のひねくれ方に好感を抱きます。
読了日:04月15日 著者:綿矢 りさ

イノベーションとは何か

イノベーションとは何か

イノベーションとは、技術革新ではない。まずこれを頭に叩きこんでおかないと本書は読めない。新しい技術が必ずしも大きな利益を生み出すことにはならない。シュンペーターイノベーションを「新結合」と読んでいて、1,新しい商品、2,新しい生産方法、3,新しい販路の開拓、4,原料の新しい供給源の確保、5,新しい組織の実現が、彼の考えるイノベーションである。つまり経営革新といってもいいだろう。このイノベーションが生まれるには完全な法則はなく、成功例をケーススタディで追いかけても法則を帰納できないけど失敗する法則はある。
読了日:04月13日 著者:池田 信夫

老人と海 (新潮文庫)

老人と海 (新潮文庫)

サンチャゴというひとりの老漁師が、一匹の巨大な魚との苦闘を繰り広げる話。巨大な魚との戦いの中で、自分の精神と、敵としての魚の行動がシンクロしていく。そこには一点の曇もない命をかけた真剣勝負があり、お互いにできるすべてをこなして戦う。そしてサンチャゴはついに戦いに勝つのだが、その後の顛末は小説を読んで欲しい。いったい何がよかったのか。それとも何が悪かったのか。人間が必死に戦って得るものはあるのだろうか。
読了日:04月08日 著者:ヘミングウェイ

最後の親鸞 (ちくま学芸文庫)

最後の親鸞 (ちくま学芸文庫)

親鸞の晩年の思想から、親鸞が達した思索の深さを推測していくという一種のアクロバティックな思想本。そこではすでに法然浄土教から離れた位置にいて、<知>よりも<愚>の方が、<善>よりも<悪>の方が弥陀の本願に近づきやすいと説いた親鸞が限りなく<愚>に近づいていこうとすることが、彼の不可能に近い最後の課題だったとするのは、はたして親鸞の思想だったのか、それとも吉本隆明の思想だったのか。称名念仏をすることが浄土にいたる道と説くことは易しい道であると同時に、易しい道がどれほど難しいかを説いたという部分は衝撃だった
読了日:04月07日 著者:吉本 隆明

狂気と犯罪 (講談社+α新書)

狂気と犯罪 (講談社+α新書)

狂人の犯罪が普通の咎人とほとんど変わりなく処罰されていた江戸時代から、一転して明治の初めには彼らを隔離するようになる。その隔離が始まる理由は、狂人の存在が近代国家として恥ずかしいからだった。日本での精神医学の発展が進まないことが、狂人を隔離する情況を促進させて、彼らの多くは凄まじく劣悪な私宅監置されたのだ。その後公立精神病院が京都や東京に設立されたが、「精神障害者」の治療をいう姿勢がなかなか世間に浸透しなかった。これに対して精神医学の父・呉秀三は「狂気」を監禁する社会を批判して様々な改革を行った。
読了日:04月04日 著者:芹沢 一也

寝ながら学べる構造主義 ((文春新書))

寝ながら学べる構造主義 ((文春新書))

難解といわれる構造主義をかみくだき、なるべくわかりやすく書かれた思想入門書。構造主義前史にマルクスフロイトニーチェの思想をかなり省略して説明した後、ソシュールフーコー、バルト、レヴィ=ストロースラカンの業績の中の主要なトピックに限って紹介してくれます。橋爪大三郎の「はじめての構造主義」は主にレヴィ=ストロースの研究を中心にしている上、構造主義のルーツも数学の歴史に求めるけれど、本書はもっと構造主義の思考と日本のつながりを感じます。構造主義入門にはこの2冊とも読んでおくことをオススメします。
読了日:04月02日 著者:内田 樹

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